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全国高等学校剣道選抜大会とは

選抜大会開催までの道のり

愛知県高等学校体育連盟剣道部

 

 インターハイと並ぶ高校スポーツの祭典「選抜大会」の開催は全国の高校剣道関係者の間で久しく待ち望まれていた。他競技がすでに選抜大会を実施していたが、新規に開催するには全国高体連が定める厳しい制約があった。全国高体連の剣道専門委員会には様々な開催案が持ち上がったが、いずれも経費の問題(スポンサー不在)のため実現に至らなかった。
現在、毎春開催されている全国高校剣道選抜大会がどのような経緯で誕生したのか、経費の問題で存続の危機にある今、開催までの道のりを正しく伝えておきたい。

 

 平成2年11月東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)より愛知県剣道連盟宛 「JR東海の社会貢献の一環として高校生の剣道大会を開催したいが可能か」との問い合わせがあった。愛知県高体連剣道部は県剣連からこれを引き継ぎ、新たな高校生の剣道大会開催に向けJR東海と検討を進めることになった。

 

 JR東海の当初の構想は中部地区を中心とした大会であったが、高体連としては全国選抜大会の実現という積年の願いがある。せっかくJR東海の協力が得られるのであれば、参加校数を絞ってでも全国規模の選抜大会としてスタートさせたい。高体連のこの思いはJR東海に理解され、共に全国選抜大会の開催に向け協力しあえる感触を得た。2年後の平成5年3月に第1回大会を開催することを目指し、様々に新しい大会の構想を巡らせる日々となった。

 

 しかし、折悪しくバブル経済崩壊の時期であり、平成3年3月JR東海から「発案の時点と社内外の事情が変わり予算確保が悲観的な状況である」との報告があった。

 5月4日、京都で開催された全国高体連剣道専門委員会の席上で、「社会情勢の変化から選抜大会の実現が困難な状況である」と報告した。専門委員会のメンバーには「またか」と落胆の色が広がった。

 それからわずか5日後、全く思いもかけずJR東海より「全国規模の大会開催のための予算が承認された。ついては平成3年度内に大会を実施して欲しい」という連絡を受けた。

 喜びと不安が同時に訪れた。選抜実現はいいが、年度内開催となれば新規の全国大会立ち上げのための準備期間が10ヶ月しかない。さらに、これに係わる教員は全く平常の勤務をかかえており、実務的に非常に厳しい仕事になることが目に見えている。しかし、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。早速、全国高体連剣道部と連携して年度内開催に向け行動を開始した。

 

 愛知県高体連剣道部には、7年前すなわち昭和58年度に愛知県でインターハイを成功させたノウハウが蓄積されており、また仲間となる若手教員が増加しつつある。何とかなるだろうという漠然とした自信があった。

 

 年度内開催に向けて、できるだけ早く大会期日を決め、会場を確保しなくてはならない。準備期間を考えると期日は遅いほど望ましい。また、都道府県により異なる終業式や入学式の日程、教員の人事異動の時期などを考慮し、役員や審判員となる教員を動員できる期日でなくてはならない。
 結局、大会期日は年度末の3月27・28日しかないと判断した。同じ3月末に秋田の魁星旗大会や明治村の八段戦が開催されており、日程の重なりが懸念された。早速、秋田県高体連に魁星旗剣道大会の日程変更を打診した。

 

 つぎに大会会場であるが、すでに年度途中であり、思い描いていた名古屋市内の施設は他団体により予約済みであった。やむを得ず名古屋市以外で探したところ、春日井市総合体育館が3月26~28日に使用可能と判り、飛びつくような思いで会場確保をお願いした。

 

 春日井市総合体育館は、板張りで6会場をとって充分余りある大きなフロア、2000を越える観客席、第二体育館、大中小の会議室その他の施設が整っており、剣道の全国大会開催にあたっては県内随一といっていい施設である。JR春日井駅をはじめ東名・名神高速道路さらに名古屋空港からのアクセスが可能な好立地の施設が希望通りの期日で確保できたことは全く運が良かったとしか言いようがない。

 

 大会開催要項を練り上げていく中で大会の構想が固まっていった。試合方法は勝者数法で試合ごとにメンバー組み替えができることを特色にした。
 インターハイでは例を見ないことであったが、プログラムに全選手・監督の写真を掲載することにし、参加者にとって一番の記念品となることを期待した。
 関係機関への協力依頼など対外的な仕事と並行して、分担した各係の実施計画を調整しなくてはならない。会議はたびたび深夜に及び、何人かそのまま学校に泊まり込み、翌朝それぞれの学校に出勤することもあった。
 平成4年2月、全国の出場校が出そろい組み合わせ会を開催した。可能な限り、同一地域の学校同士の対戦がないこと、3校リーグが多様な地域の組み合わせになることを考慮し抽選を行った。

 

 3月26日の会場設営、諸会議、審判研修等を経て、いよいよ3月27日第1回選抜大会の幕が開いた。全国から参集した選手達は堂々の入場行進を行い、気力溢れる試合を展開した。
 県内外の役員、審判員、高校生の補助役員も立派にそれぞれの職責を果たし、大会はつつがなく運営された。28日、すべての試合が終了し閉会式を迎えた。表彰は、入賞校や優秀選手に敬意を表しつつも効率よく工夫され、閉会式の時間を短縮できた。
 大会は無事閉幕した。後片づけのあと、県内役員、補助役員の高校生らと共に大会の成功を喜び合った感動は忘れられない。
 大会初日、開会式に歓迎の挨拶をお願いした春日井市長は、大会規模の大きさと整然とした開会式に感心され、次年度以降の同会場確保ほか多大な協力を保障してくれた。

 

 これまで18年間の長きにわたって、JR東海と春日井市の絶大な援助を受けて全国高等学校剣道選抜大会は続いてきた。平成21年3月の第18回大会を区切りに、JR東海がスポンサーを降りることとなったが、これまでの多大な援助に対し、高校剣道にたずさわる者として心から感謝の意を表したい。

 産みの苦しみをした第1回大会の開催以来、毎年本務の傍ら選抜大会の準備運営に当たる愛知県高体連剣道部の教員の負担は並大抵ではない。担当者たちの高校剣道に対する熱い思いが大会を支えてきたと言っていいだろう。翻って、大会を主管するわれわれ愛知県高体連剣道部が選抜大会によって育てられてきた、ということも自覚しているところである。

 

 春日井市の協力態勢はその後も充実し現在に至っているが、第19回大会からは大会経費捻出のため新たな工夫と努力が求められるようになった。また、経費の節減を図るため、従来通りにできない場面が随所に出てくるだろう。剣道を愛するみなさんのあたたかい励ましとご協力をいただいて、選抜大会が末永く回を重ねてゆけることを切に願っている。

 

文責 小山宗章  2010.3.18


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